「ショウの魔法の箱」キンプリカレンダー🗓 2022表紙より

 ショウは魔法界でも稀な強大な魔力を持って生まれた。魔法界はショウの魔力のあまりの強さに危機感を感じ、安易に魔法を使うことが許されない非魔法界に送り込み育てることにした。

 穏やかな性格のショウは普通に暮らしているように見えるが、実は特殊な力を持つ精霊に常に守られている。20代の青年に成長したショウの身に未だかつてない危険が迫っていた


(1)


 精霊は4体。ジン、キシ、カイ、レン。それぞれ特殊な能力がある。


 ジンは自分の姿を非魔法界の人間に見せることや話をすることができる。ショウの感情が乱れると魔力が暴走するため、ショウの感情をできるかぎり穏やかに保つ大事な役割を担っている。非魔法界ではショウとジンは2人とも親がいない子どもの施設で兄弟のように育った。ジン以外の精霊キシ、カイ、レンは非魔法界の人間には見えておらず、ショウにしか見えていない。


 キシは「ショウの箱」に唯一触ることができる。この箱はショウの強大な魔力を閉じこめて抑制している。ショウ1人では自分の魔力をコントロールすることができない。キシが箱に触れていることでショウの魔力はコントロールされている。キシは箱の大きさを変化させることもできる。しかし箱を小さくすることは大量のエネルギーを使うため、短時間しか行えない。箱の上に立っているのが1番容易なコントロール方法である。箱とキシ、ショウはどんな時も離れることがない。


 カイはショウ同様に強大な魔力を持って生まれた魔法界の人間だったがあることがきっかけで精霊に転生した。相手を射抜く視線で魔法力を操ることができるため、非魔法界でも瞬時に攻撃的な魔法を使うことができる。


 ショウは非魔法界にいながら常に魔法界の監視を受けており、20代になってからは、あらゆる攻撃を頻繁に受けていた。その半分はショウが魔法を暴走させずにコントロールできるか魔法界が試している攻撃で、もう半分はショウの魔力を奪おうとする悪の輩による危険な攻撃だった。ショウは非魔法界ではただの人間として暮らしているが、魔法界では彼の名を知らない人はいない。魔法界では20代になったショウが魔法界に戻ってくるのでは?という噂が広がっていた


 ショウとジンは普段は危険を避けるため人が多く集まるところに行かない。しかしその日は、施設で一緒に育った仲間の結婚式パーティーだった。

 緑のスーツを着込むジンを見て「そのスーツ新郎より派手じゃない?」とショウが穏やかに苦笑いしている時、ふいに耳元で「ショウ、ジン、行くで」とレンの声がして2人はすばやく立ち上がった。


(2)


 レンは魔法の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚を持っている。魔法界の人間や精霊が近づいたり、誰かが使った魔法の痕跡を感じ取ることができる。レンが「行くで」と短く声をかける時は何か危険が迫っていて魔法が使いやすい人目につかない場所に,移動しようという意味だ。キシは瞬時にエネルギーを全開にして箱を小さくするとポケットにしまい、カイは攻撃の眼を発動させながら移動を開始した。


 「ショウとジンはいくつになっても仲がいいな。」親代わりのだった施設長は2人が寄り添って歩く姿を見て目を細める。非魔法界の人間にはショウとジン2人の兄弟がただ歩いているようにしか見えない…